65歳以上の高齢者が歯列矯正するメリット・デメリット
こんにちは。船橋市のタワーサイド歯科室、院長の齋藤です。最近は、歯列矯正を受ける人が本当に増えてきました。皆さんの周りにも歯列矯正を始めた人、歯列矯正できれいな歯並びを手に入れた人がいらっしゃることでしょう。
そこで気になるのが歯列矯正の年齢制限です。歯並びの治療を受けている人が増えているとはいえ、60代や70代など、65歳以上の高齢者の方ではさすがに歯列矯正は難しいのでは?と考えられているようです。今回はそんな高齢者の歯列矯正に伴うメリットやデメリット、おすすめの矯正治療などを船橋市のタワーサイド歯科室が詳しく解説をします。
目次
歯列矯正の年齢制限
結論からいうと、歯列矯正に年齢制限はありません。世間的には高齢者と呼ばれる65歳以上の方で歯列矯正を行い、美しく、健康的な歯並びを手に入れている方はいらっしゃいます。歯列矯正は基本的に年齢とは関係のない治療なので、極論をいえば80代でも受けることは可能です。ただし、歯周病やむし歯などのお口の状況と共に、身体の健康状態と深い関係があることから、高齢者になるほど、歯列矯正が受けにくくなることも事実です。
高齢者の歯列矯正を難しくするポイント
【ポイント1】重度の歯周病にかかっている
一般に高齢になるほど歯周病の病状が進んでいる傾向にあります。とくに重度の歯周病は、中高年以降で顕著に見られ、顎の骨の破壊も進行していきます。歯を支える歯周組織がボロボロになることは、歯列矯正を難しくさせる直接的な原因となります。それだけに歯周病はできるだけ予防、あるいは早期治療を実現したいものです。実際に高齢者の歯列矯正は、年齢の高さではなく、顎の骨の状態が悪いことで治療を受けられないケースが珍しくありません。
【ポイント2】抜歯するのが難しい持病がある
高齢者は、高血圧症や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)といった持病を持っている方が多いです。こうした循環器疾患や代謝性疾患は、矯正治療の抜歯の際に、全身状態が不安定になったり、術後の顎骨壊死(がっこつえし)を引き起こしたりするリスクを伴うため、十分な注意が必要となります。一般的な傾向として、高齢になるほど体力や免疫力、体を正常な状態に維持する恒常性(ホメオスタシス)なども低下することも忘れてはいけません。
【ポイント3】歯の本数が少ない・歯の状態が悪い
これも自然な現象ではありますが、20~30代と比較すると、60~70代の方の方が残っている歯の本数が少なく、ブリッジや入れ歯、インプラントなどを入れている割合は多くなります。歯列矯正は、天然歯を動かして、きれいな歯列弓を作り上げる治療なので、残っている天然歯の数が少なかったり、その状態が悪かったりすると、得られる結果も自ずと悪くなってしまいます。こうした口腔環境では、歯列矯正の難易度が大きく上がるとともに、そもそも治療が受けられない可能性が生じます。
高齢者が歯列矯正するメリット・デメリット
続いて、高齢者の歯列矯正に伴うメリットとデメリットを具体的に解説します。
【メリット】
認知症のリスクが下がる
歯列矯正で歯並びと噛み合わせが正常化されると、上下の歯がしっかり噛めるようになり、咀嚼筋への刺激が増えることで脳の血流も良くなることが見込まれます。その結果、認知症の発症リスクを下げることにつながります。
食べ物の消化・吸収が良くなる
咀嚼能率が上がると、食べ物を細かく粉砕してから飲み込めるため、胃腸での消化・吸収を改善する事につながります。これはお身体の健康維持へと直結します。
歯磨きしやすくなる
きれいに整った歯並びはブラッシングしやすく、細菌の温床となる歯垢や歯石がたまりにくくなります。その結果、虫歯や歯周病になるリスクが大きく低下します。衛生的な口内環境を維持できることは、口臭予防にもつながるでしょう。
横顔が美しくなる
出っ歯や口ゴボなどの症状が認められるケースでは、歯列矯正によって横顔の美しさの指標であるEラインの改善が見込めます。Eラインとは、鼻先と顎の先を結んだ線で、口唇がそのライン上に位置しているのが日本人の一つの基準とされています。高齢者の歯列矯正でもそうしたEラインの改善効果が見込めることがあります。
老後の生活の質が上がる
ここまで見てきたように、高齢者の歯列矯正では、認知症のリスクが下がり、食べ物の消化・吸収が促進され、虫歯・歯周病にかかりにくくなり、さらに、美しい歯並び・横顔を手に入れることが期待でき、老後の生活の質も大きく向上するでしょう。人生100年時代が近づきつつある今、60代から歯列矯正を始めても決して遅くはありません。
【デメリット】
矯正を断念することがある
歯周病や骨粗しょう症などで顎の骨の状態が悪かったり、高血圧症や糖尿病といった全身疾患を患っていたりする場合は、事前に適切な治療や処置を施さなければならないことがあります。また、内科との連携も必須となることから、高齢者の歯列矯正はすぐに始められないケースが珍しくありません。環境が整わない場合には、矯正治療を断念することがあります。
歯が動きにくいことがある
私たちの顎の骨は、加齢とともに硬くなる性質があります。そのため高齢者の矯正治療は、治療期間が長引くことがあります。また、外傷によって引き起こされるアンキローシス(骨性癒着)は、歯の移動を困難にすることが多く、歯列矯正の計画を乱す原因となります。
虫歯・歯周病のリスクが上昇する
高齢者は、唾液腺の活動が低下しているため、唾液による自浄作用・抗菌作用・殺菌作用・歯の再石灰化作用・緩衝作用などが働きにくくなっています。そこに清掃性が悪くなる矯正装置を固定すると、口腔衛生環境はさらに悪化することから、虫歯・歯周病リスクが顕著に高まる点に注意しなければなりません。
高齢者にオススメの矯正治療
ここまでは、高齢者の歯列矯正の特徴やメリット・デメリットについて解説してきました。その内容も踏まえた上で、高齢者にはマウスピース矯正が比較的オススメといえます。
マウスピース矯正(インビザライン)
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを患者さん自身が装着して歯並びを治す方法です。食事や歯磨き時には装置を外せるため、矯正中の虫歯・歯周病リスクの高まりを防ぎやすくなります。また、口腔環境や全身状態が悪くなった時にすぐ撤去できることも高齢者の歯列矯正において有利に働く点といえます。
ワイヤー矯正
高齢者の歯列矯正では、ワイヤー矯正もオススメできます。ワイヤー矯正は、適応範囲が広い方法です。高齢者でも矯正を行う上でのお口の状態や全身状態に大きな問題を抱えていない方には、ワイヤー矯正もお勧めしています。
まとめ
今回は、65歳以上の高齢者が歯列矯正をするメリットとデメリットについて、船橋市のタワーサイド歯科室が解説しました。歯列矯正そのものには年齢制限がないため、60代でも治療を受けられます。60代や70代では、高齢者の歯列矯正ならではのリスクやデメリットを伴うこともありますが、担当医や歯科衛生士と一緒に考えながら、最善と言える方法を見つけていきましょう。
人生100年時代では、65歳の方には35年もの時間が残されています。これからの長い人生のためにも歯列矯正で美しく、健康的な歯並び・噛み合わせを手に入れてみませんか?
斎藤 院長
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