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矯正で抜歯したあとの穴はいつ埋まる?期間とリスクを徹底解説

カテゴリー: 矯正治療全般

矯正治療のご相談を受ける際、「抜歯が必要と聞いて不安です」「穴があいたままにならないですか?」という質問をよくいただきます。確かに、お口の中にぽっかりと穴が空くことを想像すると、少し怖い印象を持たれるかもしれません。しかしご安心ください。矯正治療における抜歯は、計画的に行われる“治療の一部”であり、穴も時間をかけて自然に埋まっていきます。

今回は、「矯正のために抜歯したあとの穴がいつ埋まるのか」について、治癒のメカニズムや注意点を含めて詳しく解説いたします。さらに「矯正のために抜歯した後の隙間がいつ閉じるか」についても、解説いたします。

なぜ矯正で抜歯が必要になるのか

歯列矯正では、歯を正しい位置に並べるためのスペースが足りない場合、主に小臼歯を抜いて調整を行います。たとえば、顎が小さい・歯が大きいといった場合、歯を無理に並べると口元が突出したり、噛み合わせが乱れたりすることがあります。このようなケースで便宜的に抜歯を行うことで、歯を理想的な位置に移動できるようになるのです。

  • 前歯を後ろに下げたい:第一小臼歯(4番)を抜く
  • 奥歯のスペースを作りたい:第二小臼歯(5番)を抜く

このように、見た目の改善だけでなく機能的な咬合(こうごう)を得るための抜歯であり、歯を減らすことが目的ではありません。

歯の位置

抜歯したあとの穴はどのように治るのか

抜歯後の穴は、専門的には「抜歯窩(ばっしか)」と呼びます。この部分は、時間の経過とともに自然治癒していきますが、完全に埋まるまでには半年〜1年程度かかるのが一般的です。
治癒の過程は、以下の4段階に分かれます。

治癒の段階 おおよその期間 主な変化
血餅形成期 抜歯直後~1週間 穴の中に血が溜まり、かさぶたのように固まる。
これが治癒の出発点。
肉芽組織形成期 1~3週間 血餅が肉芽組織(新しい歯ぐきのもと)に置き換わり、穴が少しずつ浅くなる。
仮骨形成期 約3か月~半年 骨の再生(仮骨形成)が始まり、内部が徐々に硬くなる。
治癒期 約6か月~1年 骨と歯ぐきが完全に再生し、穴はほぼ目立たなくなる。

※喫煙や糖尿病、貧血、歯周病などがある方は、治癒が遅れることがあります。

矯正治療では「穴が埋まるのを待たない」

抜歯後の矯正

矯正の抜歯後、「穴が完全に埋まるまで治療は進められないのでは?」と思われる方もいらっしゃいますが、それは誤解です。実際の治療では、穴が完全に塞がる前から歯を動かしていくのが一般的です。

たとえば、4番(第一小臼歯)を抜いた場合、前方の3番(犬歯)と後方の5番(第二小臼歯)を、抜歯したスペースに向けて少しずつ移動させます。これは、歯の移動と骨の再生は同時に進行するためです。

こうした同時進行によって、歯が自然な位置へ移動する間に抜歯窩も内部から新しい骨で満たされ、見た目や機能の両方が回復していくのです。

スペース(隙間)が埋まるまでの目安

抜歯した部分の“穴”の話から少し派生しますが、抜いた場所の隙間について考えてみます。

抜歯した小臼歯の幅は約7mm。歯は1か月あたり0.5〜1.0mmほど動くため、単純計算では7〜14か月程度で隙間が閉じる計算になります。もちろん、これは目安であり、歯の動き方や装置の種類(ワイヤー矯正・マウスピース矯正など)によって個人差があります。

また、歯の動かし方にも「傾斜移動」と「歯体移動」があり、後者のほうがより時間を要します。最終段階で残り1〜2mmの隙間がなかなか閉じないときは、この“歯体移動”の過程にあることが多く、焦る必要はありません。

抜歯後の穴や隙間が埋まらない場合に考えられること

ドライソケット(乾燥窩)

抜歯直後の穴に血餅(けっぺい)ができず、骨が露出して強い痛みが出る状態をいいます。これは抜歯後の1週間以内に起こりやすく、強いうがいや喫煙が主な原因です。治療には消毒や鎮痛処置を行いますが、再び血餅が形成されるまで時間がかかることもあります。

治療計画の不整合

矯正治療中に隙間がなかなか閉じない場合、力の方向・強さの調整が適切でない可能性があります。特に自己管理型のマウスピース矯正では、装着時間が不足していると歯の移動が停滞します。違和感や経過の遅れを感じた際は、早めに担当医へご相談ください。

抜歯後1週間の過ごし方が“治り”を左右する

抜歯直後の過ごし方

治癒をスムーズに進めるためには、抜歯直後の1週間の過ごし方が最も重要です。
血餅がしっかり形成されるよう、次の点に注意してください。

  • 強いうがいは避ける
  • 舌や指で抜歯部を触らない
  • 抜歯した部分をブラッシングしない
  • 熱い・辛い・硬い食べ物は控える
  • 激しい運動・長風呂・飲酒を避ける
  • 処方された薬は指示どおりに服用する
  • 喫煙はしない

1週間を過ぎると、徐々に通常の生活に戻せますが、喫煙は骨の再生を妨げる要因です。可能な限り禁煙を続けることをおすすめします。

その後のセルフケアと生活習慣

抜歯後1週間を過ぎると、歯ぐきが安定してきます。通常どおりの食事や運動ができるようになりますが、口腔ケアは引き続き丁寧に行いましょう。

  • 柔らかい歯ブラシで、抜歯部の周囲をやさしく清掃
  • 食後は軽くうがいをして、食べかすを残さない
  • 就寝前のブラッシングとフロスを忘れずに

こうした日々の積み重ねが、治癒を早め、トラブルを防ぎます。

まとめ:焦らず、自然な回復を待ちましょう

矯正で抜歯したあとの穴が完全に埋まるまでには、半年〜1年ほどかかります。しかし、歯の移動と骨の再生は同時に進むため、治療の流れに支障はありません。

抜歯直後の1週間を丁寧に過ごし、禁煙や正しいセルフケアを続けることで、抜歯窩は自然に塞がっていきます。もし「治りが遅い」「痛みが続く」と感じた場合は、早めに主治医にご相談ください。

タワーサイド歯科室では、抜歯を伴う矯正治療でも、痛みや不安を最小限に抑えた診療と丁寧な説明を心がけています。「抜歯が怖い」「穴が塞がるまで不安」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。患者さま一人ひとりに寄り添いながら、安全で納得のいく矯正治療を進めてまいります。

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斎藤 院長

斎藤 院長

こんにちは、院長の斎藤幸彦です。タワーサイド歯科室では、悪くならないように通院する「予防歯科」と、全身の健康を守るための、噛み合わせ・歯列矯正について力を入れています。みなさんの健康回復と維持、幸せな人生をサポートするという志で、誠実に対応しています。安心してご相談くださいませ!

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