口ゴボとは、口元が“ゴボッ”と膨らんだ症状で、いわゆる出っ歯に相当する歯並び・噛み合わせの異常と考えていただいて間違いありません。口ゴボは医療用語ではなく、その定義も曖昧なのですが、専門的には「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」や「上下顎前突(じょうかがくぜんとつ)」が当てはまります。
上顎前突や上下顎前突は、遺伝的な要因によって引き起こされることがあります。まず、“骨格”は親子である程度似てくるもので、その特徴が口ゴボという症状で現れる場合があります。また、“軟組織”にももちろん遺伝の要素があり、舌の大きさ、お口周りの筋肉の付き方やそのバランスの不調和等から口ゴボにつながることがあります。
次に挙げるような習慣がある場合は口ゴボになりやすいと言えます。適切な時期に原因となる習慣を解消できれば、口ゴボを予防、あるいは改善することができます。
こうした習慣があると、前歯が前方に傾いたり、お口周りの筋肉および骨の発育が遅れたりして、口ゴボの症状が現れることがあります。
口ゴボは、「Eライン(エステティックライン)」でセルフチェックできます。Eラインとは鼻と顎の先端を結んだ線で、鏡で横顔を見ながら人差し指を当てることで確認できます。
標準的な口元の位置は人種によって異なります。私たち日本人の場合は口唇がEラインに接する、言い換えればオンラインの状態と言われています。
口ゴボをお悩みの方は概ね口唇がEラインより外側に出ています。しかし口唇がEラインより外側に出ていたとしても、治療対象とならないこともあります。個人差や個性としてそれを尊重すべき場合もあって当然です。また、睡眠時無呼吸症候群が見られる時は、口ゴボの治療が好ましい場合と好ましくない場合があり、慎重な判断が必要です。
口ゴボの症状につながる原因には前述のように「遺伝的な要因」・「習慣性の要因」の2つがあります。これらをもう少し細かく見てみると、以下の4つに分けられます。
1つ目に関しては歯列矯正で改善可能なことが多いと言えます。歯の傾きや位置、上下の歯列のバランスを調整したりすることで、口ゴボの症状を緩和できます。しかしケースによっては外科矯正の適応となり、外科手術が必要です。
2つ目は歯科での対応は難しくなります。形成外科や美容外科でカウンセリングを受けていただくと、歯科以外の方法で口ゴボを治療する策を提案してくれるはずです。
3つ目は、舌やお口周りの筋肉のトレーニングで改善することがあります。但し筋肉トレーニング単独では治療効果が出にくいこともあります。
4つ目に関しては標準的な歯列矯正で治せることが多いです。前方に傾斜している前歯を正常な角度に戻すことで、口ゴボの症状が改善されます。スペースが不足している場合は、抜歯が必要となります。
口ゴボを放置することで生じるリスクには、次のようなものが考えられます。
口ゴボをコンプレックスと感じる方は数多くいらっしゃいます。自然に笑うことができなくなったり、笑う時に口元を隠すようになったりすることも珍しくありません。
口ゴボの多くは、前歯部の噛み合わせの異常を伴います。食べ物を前歯でうまく噛み切ることができないため奥歯や顎関節に過剰な負担がかかりやすく、さらに食べ物を細かく咀嚼できていない状態で飲み込むことから、胃腸にも大きな負担がかかります。
前歯の傾きや位置に異常があると、発音にも悪影響が現れやすいです。
口ゴボの中で、唇を閉じることが難しい場合には、口呼吸が誘発されます。その結果、口内が乾燥して細菌の繁殖が促され、虫歯や歯周病、風邪などの感染症リスクが上昇します。口臭も強くなりやすいです。
口ゴボの中で「上顎前突」に該当する方の一部では、下顎が後方へ押し込まれています。このような場合には小学生のうちに改善しておかないと、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすリスクが高まる可能性があります。
口ゴボは、次に挙げるような矯正治療を行います。
歯列の“表側”に、金属製のワイヤーと四角いブラケットを装着する治療法です。最もスタンダードな矯正法で、さまざまな口ゴボの症例に適応できます。
当院では、ホワイトワイヤーやゴールドワイヤーと透明なブラケットを組み合わせて治療ができますので、口ゴボの矯正中でも装置が目立ちにくく進められます。
また、笑った時に歯茎が目立ってしまう場合には、「インプラントアンカー」という特殊な装置を使うことがあります。
歯列の“裏側”に、金属製のワイヤーと四角いブラケットを装着する治療法です。装置が表側から見えないため、口ゴボの矯正中であることに気付かれにくく進められます。
但し目立ちにくさと引き換えに、舌への器具の干渉が大きいため、治療中の痛みが強く出てしまう方法です。
透明な樹脂製のマウスピースを使った矯正法です。装置が目立ちにくく、食事と歯磨きを普段通りに行えるというメリットがあります。
当院ではインビザラインというマウスピース矯正に対応しております。ワイヤー矯正を併用したり、インプラントアンカーを併用することもあります。
口ゴボは小児期から治療開始することが可能です。顎の発育が遅れている場合は各種装置で顎の拡大を図ります。また、口呼吸の改善や口腔周囲筋の発育を促す効果が期待されるプレオルソで口ゴボの症状を軽減できる場合があります。
小児期の口ゴボ治療は症例によってアプローチが大きく変わりますので、関心のある方はお気軽に当院までご相談ください。
Question
日本人の口ゴボの割合を教えてください
Anwer
日本人の口ゴボの割合は10%程度と言われています。計算上10人いたら1人が口ゴボとなるので、日本ではかなり頻繁に見られる歯並びの状態といえます。日本人は欧米人と比べると顎の骨が小さく、歯をきれいに並べるためのスペースが不足しがちなことから、口ゴボの割合もやや多くなっているのかもしれません。
Question
口ゴボは自分で治せますか?
Anwer
口ゴボを自分で治すことはできません。自分で強引に治そうとすれば、かえって歯並びが悪くなることもあります。深刻なケースでは歯が折れたり、歯が割れたりするため、口ゴボを自分で治そうとすることはお止めください。歯並びの専門家の診査診断後に治療を受けることが大切です。
Question
口ゴボは何歳から治せますか?
Anwer
口ゴボを治す年齢は、お口や身体の発育状況によって変わります。幼児期から口ゴボの症状が見られる場合は、その原因を取り除くために6歳頃から治療を始めることがあります。口呼吸の改善等を目的とするプレオルソは、比較的早い時期に治療をスタートすることが多いです。一般的なケースで口ゴボを治す場合は、9~10歳くらいから始めると良いでしょう。
Question
矯正治療する場合、何年かかりますか?
Anwer
口ゴボを矯正で治す場合は、1~3年程度かかります。保定期間も含めると、全体では4~6年程度かかるものとお考えください。小児期に口ゴボを治す場合は、顎が成長する力を利用できるため、治療期間は短くなることもあります。